【レビュー】父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 ヤニス・バルファキス(著)

2019年6月5日

オススメ度:★★★★★★

今回はベストセラーの「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」の紹介です。

昨日はこの本を読み始めてしまったせいで全然眠れませんでした・・

この本、とにかくわかりやすいうえに面白い!

ギリシャの財務大臣だった方が、娘に語るように専門用語をほとんどなくして話し口調で綴られています。

僕は世界の経済の知識は全然ないんですけど、それでもさくさく読み進めることができました!

経済の本って難しくてとっつきにくい感じがありますよね(笑)

でもこの本はお世辞抜きに面白いです!

なぜ、こんなに「格差」があるのか?

第1章では世界にはなぜこんなにも格差があるのか?という問いに様々な角度から疑問を投げかけています。

侵略した国、された国にも間違いなくそうなった理由があったんですね。

自然からとれる食糧が豊富で農耕の必要がない国は、ある程度厳しい環境で生きてきた人間には勝てないわけです。疫病などの免疫があるだけでもう勝負はついているようなもんなんですね。戦いではなく病で亡くなった人の方が圧倒的に多かったというのもそれが原因なんでしょう。

生物兵器、恐ろしや・・

かつて外国との格差はこうやって広がったみたいですが、国内にも格差は存在する。

農耕で食料を蓄えることができるようになると、「余剰」が生まれる。

支配者はこの余剰を独り占めしようとするし、一度そちら側の人間になるとそれが当たり前になる。持つ者は持っているのが当たり前、持たざる者は持っていないのが当たり前。

これは現在の僕たちにも当てはまりますね。

恵まれた日本という国で生まれた僕は、貧困で苦しんでいる子供達の存在を知ってはいるものの、普段当たり前のように物を粗末にしてしまったりしています。

この辺はかなり考えさせられましたね・・・

ただもう当たり前が刷り込まれてしまっている状態から変わることはとても難しいと思います。

うーん、もどかしい。

市場社会の誕生

第2章は市場社会の誕生について。

現代の社会ではほとんど何でもお金で買えると思います。

まあ愛とか友情とかは別ですが、この章ではお金で買える「交換価値」とお金では買えない「経験価値」について綴られています。

献血が有償の国では無償の国よりはるかに血液が集まりにくいらしいです。

これは正直驚きました。僕も現代の社会に脳がやられてしまっているのでしょうか・・・

昔は助け合いの精神が強く、今回何かしてもらったら「これで借り1だな」って具合に次なにかしてあげたくなる。でも今ではそういったこともお金で解決するのが当たり前になってきてますよね。田舎の方はまだそういうのが残ってる気もしますが、都心では特にそれを感じます。

娘に部屋の片付けを頼むシーンで次のようなセリフがありました。

「パパ、いくらあげたらお手伝い免除してくれる?貯金箱からお金を持ってきてパパにあげるから」

娘にこんなこと言われたら相当ショックですよね(笑)

どこで育て方を間違えたんだろう、と思ってしまうかもしれません。

こういう助け合いの精神は市場の取引とは対極にあるものですが、テクノロジーの発達によってこれからもどんどん機械的になっていくと思うとなんだか複雑な気持ちになりますよね。

「利益」と「借金」のウエディングマーチ

第3章では全ての利益は借金から生まれる、という話です。

これだけ聞くと「えっ??」ってなるかもしれません。はい、僕もなりました(笑)

ただ読み進めていくと、「あぁそういうことか」ってなります。

昔の封建時代に農奴がどうやって生活していたかという話になるんですが、今でいう起業家みたいな感じですね。

例えば・・

借金→開業→大儲け→返済→もっと借金→もっと儲ける

みたいな流れですね。

意外と昔から変わってないんだなーって感じますね。

「金融」の黒魔術

第4章はお金の流れについてです。

3章で借金の話をしましたが、ここではそれに関連して銀行の話になります。

起業家は銀行から借金をしてビジネスを始めますが、たくさんの起業家に貸し出せるほど銀行に現金はありません。

ではいったいどうやって貸し出すのか?

・・・

・・

はい。正解はこちら。

「どこからともなく魔法のようにパッとだす」でした。(笑)

なんのこっちゃと思うかもしれませんが考えてみればそうですよね。銀行がやることは起業家の銀行口座の数字を変えるだけです。

ただもちろん無差別にこんなことをしていたら銀行は破綻します(笑)

この章で起業家はタイムトラベラーと呼ばれていますが、彼らは自分の未来からお金を引っ張ってきているんですね。そして銀行はそれをチェックします。この人なら大丈夫そうと判断すればその手にお金を掴ませます。もちろん不安な人には貸し出せません。こうやって銀行がリスクを背負うかわりに利子を取って利益を得ています。

しかし、産業革命で市場社会の経済がものすごい勢いで成長すると借金の額が爆発的に増加しました。そこで、銀行は損をしないように次の様な方法を思いつきます。

例として、ここでは起業家に5000万円を貸し出すものとします。

その5000万円を小口にしてたくさんの投資家に販売するのです。

1000人の投資家がいれば銀行はそれぞれの投資家から5万円ずつ受け取れる。投資家は銀行に預けるより利子がつくので喜んで投資するし、銀行はそれ以上の利子を起業家から受け取る。

こうすれば銀行はすぐに5000万円を回収できるし、起業家が破産しても投資家が損をするだけだ。

でもここには落とし穴がありました。

この状況なら銀行はどんどんお金を貸し出そうとしますが、いずれ社会全体の借金の額が莫大になり返済が追い付かなくなるんですね。

みなさん、ご利用は計画的に(笑)

世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界

第5章では失業をテーマに面白いたとえ話を交えて話が進んでいきます。

職探しに困っていて、毎月少しずつハードルを下げて探していて、最終的にかなり程度の低い仕事にも応募したがそれでも仕事にありつけないという。

また別の話になるが、別荘を売ろうとしている人がいて、なかなか売れなくて困っている。ただこちらの場合は値段を下げていけばいずれ必ず売れるだろう。

この2つの話は似ているようで根本的に大きな違いがある。

今の日本で仕事にありつけないということはほぼあり得ないと思うので、あまりイメージはわかないかもしれませんが、労働者が限りなく安い賃金で働くということがまかり通ってしまうと社会のバランスが崩れてしまいますよね。

労働市場は経済全体の楽観と悲観によって左右されるもののようで、なかなか思い通りにはならないんですね。

最低賃金を下げるルールが決まれば会社は喜んで人を雇うと考えるかもしれませんが、そんな簡単な話ではないようです。

賃金が下がれば労働者の生活は苦しくなる。生活が苦しくなれば物が売れなくなる。物が売れなくなれば会社の売り上げが落ちる。売り上げが落ちると人は雇えないですよね。

こうやって負の連鎖が始まってしまいます。

上記は悲観的なケースですが、全体が楽観的になり、それをみんなが信じればこの逆もまた然りです。

日本の最低賃金が毎年上がっているのもこんな背景があったりするのかもしれませんね。

恐るべき「機械」の呪い

第6章はテクノロジーの話です。

今の社会はテクノロジーの発達でどんどん人間の仕事が機械に置き換えられ、自動化が進んでいます。しかし、このまま機械が全ての仕事をできるようになってしまうとどうなるのか?そういった話を様々なたとえ話や映画を例にだして綴られています。

1つ例を紹介すると、映画「マトリックス」の話です。

僕はマトリックスを全ては見ていないので、実際のストーリーなどはあまり詳しく知りませんが、どうやらロボットが世界を支配する話のようですね。ロボットは人間からエネルギーを回収するために、植物のように栄養を与え生かしている。ただ人間は自由や希望がないとすぐに死んでしまうため、幸せな生活を送っている夢を見させられているという・・

恐ろしい話ですが、実際今の生活が見させられている夢なのかどうか、それを判断する方法はありませんよね。生まれてから今までの生活が全て仮想現実のようなものだったら・・・

考えるだけで怖くなってしまいます。

少し話が逸れましたが、人間の仕事が機械に置き換わると仕事がなくなります。現実問題人の手から離れた仕事は既に多く存在しており、これからもそれは増えていくでしょう。

しかし、その分かわりに新しい仕事が生まれるのでしょうか?

もちろんある程度生まれるのは間違いないでしょう。

ただ職を奪われた人たち全てが新しい職につけるのかと考えると、決してそういうわけにはいかないと思います。

実際に昔は機会に仕事を奪われた人たちが反旗を翻し抗議するなんてこともあったみたいです。

自分の将来のことをよく考え、改めて今の仕事と向き合っていかなくてはいけないと思いました。

誰にも管理されない「新しいお金」

第7章では収容所でタバコがお金の代わりになっていたという話から、ビットコインの話に続きます。

ある収容所では定期的にタバコやコーヒー、紅茶などの嗜好品が配給されていました。これは、皆に共通のものが配給されていたため、「タバコとコーヒーを交換しよう」といった具合に物々交換が行われていました。

もともとは商才に長けた人がサヤで利益を得るために行っていましたが、これがだんたんと広がっていき、やがてタバコ何本でコーヒー何グラムといった具合に相場が決まってきました。

しかし、だんたんと収容所の経済が複雑化していき、コーヒーと紅茶を交換したいがタバコしか持っていないといったことが発生するようになると、お金に代わるものが必要になってきました。そこで、腐らず、かさばらず、皆が共通して手に入るものとしてタバコがお金の代わりになったようです。

ここから、サヤで稼ぐことができなくなった人は、次に銀行の真似事を始めました。

タバコを10本貸し出し、次の配給のときに12本で返してもらうといった感じです。

もちろんある程度の信用がないとできないことだと思いますが、当時の収容所では成り立っていたんですね。

しかし、こういった経済は終わりが見えてしまうと一気に破綻してしまいます。

終戦が間近に迫ると、捕虜たちはため込んだタバコを吸いつくし、借金も煙のように消えてなくなりました。このようにして収容所の経済は破綻しました。

僕たちの生活の中では政治とお金は嫌でも結びついてきます。収容所では債務と税金がマネーサプライと無関係だったことが、外と内の決定的な違いですね。

ビットコインについては、そもそもの仕組みなどの話が多かったのでここでは割愛します・・

人は地球の「ウイルス」か?

先ほどの話の続きにはなってしまいますが、マトリックスにでてくるエージェント・スミスは人間のことをウイルスと呼んでいます。

地球上の哺乳類はどれも環境と調和し自然と均衡していくが、唯一人間は違う。そして、それはウイルスと同じパターンだという。

確かに人間は交換価値を得るために多くの環境を破壊してきましたよね。

その一例としてこんな話が登場します。

川を泳ぐマスを思い浮かべてください。人間が全てのマスを釣ってしまったらもう終わりです。マスはそこで絶滅してしまいます。しかし、一度に少しずつ釣っていけば絶滅することもなく、永遠に釣っていくことができます。

これは誰もがわかっていることですが、市場社会では競争せざるを得ない状況なので、利益が出る以上釣ることをやめることはありません。

こうやって環境破壊が進んでいくんですね・・

これを食い止めるには、地球を誰かが買えばいいと著者は言っています。具体的には森や山などの天然資源ですね。

買うと言っても、個人や一企業が所有するのではなく、小分けにして多くの人が所有できるようにします。分け方としては、株券のようなものを発行し、その所有数に応じて資源から生まれる利益を分割します。

こうすれば確かに多くの人が積極的に自然を守ろうとするので環境破壊が食い止められそうですね。こういった動きは既に政府や一部企業で実施されているそうです。

進む方向を見つける「思考実験」

最後にエピローグとして1つの思考実験の話になります。

経験価値最大化装置というもので、これはあなたの脳波を読み取り、あなたが何を好きで何を嫌うのかなどを100%正確に理解してくれます。そしてあなたの基準で最高だと思う人生を仮想現実にしてくれます。しかし、一度そちら側の世界にいってしまったら二度と現実世界には戻ってこられなくなる。あなたは仮想現実の世界にいきたいだろうか?

難しい質問ですよね。僕は少し考えましたが、やはり二度と戻ってこれないのであれば答えはノーです。

本書でもイエスと答えた人向けに警告をしており、そんな世界は間違っていると言っています。

ではどこが間違っているのか?

人生において、何がほしいか、何がしたいかというのは日々変化するもので、それは今までの経験によって変わってきます。10年前に欲しかったものと今欲しいものが全く同じということはないでしょう。

仮想現実の世界に行ってしまったら、「今」の理想が全てになってしまいます。これから変化するはずだった自分の望みを固定させてしまします。そんな変化も成長もない生活なんて人間らしくないですよね。

まとめ

長々と書いてしまいました・・

ここまで目を通していただきありがとうございます。

最後は経済から少しはずれた話になりましたが、最初にお伝えした通りこの本はやはり面白くわかりやすい!

老若男女問わず全ての人にオススメしたい一冊でした。

経済の本は苦手という方でもこの本なら読めると思います。

僕のレビューがこの本を読むきっかけになってくれたら幸いです♪

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by カエレバ